不連続作品鑑賞

感想めもです。ネタバレしかない。

私が大好きな小説家を殺すまで/斜線堂有紀

私が大好きな小説家を殺すまで/斜線堂有紀

 

ストーリー自体が奇抜かといえばそんなことは無いし、終わり方が予想外だったかといえばそんなこともない。テーマだって構成だって珍しいものではなかったはずなのに、どうしてこんなに必死に、苦しくなりながら読んだのか。私は基本的には、どんでん返しのある作品の方が好きだ。だってそのほうが面白いから。1番怪しいヤツが犯人であるミステリーは興ざめしてしまうように、予想通りであることは一歩後ろの安全圏からそれを認識することができることに等しく、そのぶん感動を与えることはむずかしい。檻の外から遠くの猛獣をみるのと同じである。はずである。しかし、この作品はそうではなかった。猛獣は透明な板を挟んだすぐそこにいたのだ。迫力のある無機質な暴力を、食べてもらうことも出来ずに最後まで受け続けた。想定外でないことが自分たちを隔てる板だった。いっそ食べられた方が、苦しまずに読みきることが出来たと思う。
薦めてもらったとき最初の一文を読んで心を掴まれたのに、続くプロローグでそういう感じね、と勝手に察した気になって後回しにしたことを後悔した。ごめんね。要するにめちゃめちゃ好きで死ぬほど刺されながら読みました。ありがとうございました。